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神武天皇 (3)宇陀の兄宇迦斯・弟宇迦斯

神武天皇 (3)

宇陀の兄宇迦斯・弟宇迦斯
うだのエウカシ・オトウカシ


そこから踏みうがち、山を越えて、宇陀にやって来ました。
だから、そこを宇陀のうがちと言います。
この宇陀には、兄(え)ウカシ弟(おと)ウカシという兄弟がいました。

そこで、イワレビコの命はまず、八咫烏を遣わして、二人に尋ねさせました。
「今からここに、天つ神の御子がお越しになる。お前たちは、お仕えするか。」と。
すると、兄ウカシは鏑矢(かぶらやー音の出る矢)で、
その使いを待って射返しました。
そこで、鏑矢の落ちた所をかぶら崎と言います。
そして、待ち構えて攻撃しようと言って、軍勢を集めました。

しかし、集まらなかったので、「お仕えします」と偽って、大きな御殿を作って、
その中に、押機(おしー踏めば打たれて圧死する仕掛け)を作って隠して、待ちました。

すると、弟ウカシが先にイワレビコの命の所へ出向いて、拝んで言いました。
「私めの兄、兄ウカシが天つ神の御子の使いを射返して、
待ち伏せして攻めようとして軍勢を集めましたが、集まらなかったので、
御殿を造り、その中に押機を張って待って、殺そうとしています。
だから、こうして暴露するために参上ました。」

それを聞いた、大伴の連(おおとものむらじ)等の祖先の道臣の命
(みちおみのみこと)と、久米直(くめのあたえ)等の祖先の大久米の命の二人は、
兄ウカシを召して、ののしって言いました。

「お前がイワレビコ様の為に作ったという御殿の中に、お前がまず入って、
お仕えしようという心を証して見せろ。」
そう言うと、横刀(たち)の柄(つか)を握って見せ、矛を向けて、
弓には矢をつがえて、押し迫りました。

兄ウカシは追い込まれて、自分が作った押機に打たれて死んでしまいました。
道臣の命と大久米の命の二人は死体を引きずり出して、切り散らしました。
こうして、その地を宇陀の血原と言うようになりました。

その後、弟ウカシは盛大な宴でもてなしましたが、
イワレビコの命はすべて自分の軍勢に与えました。
その時に歌を歌われました。

  宇陀の小高い丘に (シギ・鳥の名)の罠を張ったが、
  私の待つ 鴫はかからない。
  なんとまあ、大物のが かかったぞ。

  最初の妻が おかずが欲しいと言えば、
  蕎麦(ソバ)の実の 少ないのを 出してやるさ。
  二番目の妻が おかずが欲しいと言えば、
  イチサカキの実のたくさんついたのを、食べさせてやろう。

  ええ、シヤゴシヤ、これはののしるのさ。
  ああ、シヤゴシヤ、これはあざ笑うのさ。

こうして、弟ウカシは宇陀の水取の祖先となりました。

                     (つづく)
スペルボーン(Spellborn)