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大国主神(3)スセリ姫と八上姫

                                   【古事記】   

大国主神(3)

スセリ姫と八上姫

         
 こうして大穴牟遅(おおなむぢ)の神オオヤビコの神の言葉に従って、スサノオの命を訪ねて、根の堅洲国にやって来ました。娘のスセリ姫が出て来て一目ぼれをすると、二人はすぐに結ばれました。そうして宮殿に戻って来て、父神に言いました。
「とても、きれいな神が見えました。」と。
 それを聞いて、スサノオの命が出て行ってみて、
「これは葦原の国のブサイク男と言う方だぞ。」
と言いながらも、すぐに宮殿に招いて、蛇の部屋に泊めました。

 妻のスセリ姫は「蛇の領巾」(ひれ)(スカーフ)を大穴牟遅の神に渡しながら、
「蛇が噛みつこうとしたら、この領巾を三回振って打ち払って下さい。」
と言いました。
そこで言われたとおりにすると、蛇は自然と静まりました。こうして、ゆっくりと寝て、翌朝は無事に蛇の部屋から出て来ました。

 また、次の日の夜はムカデと蜂の部屋に入れられました。スセリ姫は「ムカデ蜂の領巾」を渡して、同じように教えたので、やはりぐっすりと寝て、出て来ました。

 また次には、スサノオの命は大きな音のでる鳴鏑(なりかぶら)の矢を野原に射て、その矢を取ってくるように言いました。そこで、大穴牟遅の神が野に出た時、スサノオの命は火を付けて、野をぐるりと焼きました。

大穴牟遅の神が逃げ出す方向が分からずにいたら、ネズミが出て来て言いました。
「内はホラホラ。外はスブスブ。」
(土の中はほら穴だよ。外の目印はくぼんでいるよ。)
それを聞いて、足元を強く踏みつけると、穴に落ち込んでしまいました。その穴に隠れている間に、火は焼けながら過ぎて行きました。

それから、ネズミが鳴鏑(なりかぶら)の矢をくわえて持って来ました。その矢羽はネズミの子がみんな食べてしまっていました。

 何も知らないスセリ姫は、夫は死んだと思い込んで、葬式の道具を持って、泣きながら野原にやって来ました。父神ももう死んだだろうと思って、野原に出て来ました。
 すると、大穴牟遅の神がその矢を持って来たので、スサノオの命は彼を宮殿に連れて帰り、今度は大きな部屋に呼び入れて、自分の頭のシラミを取らせました。

 その頭を見ると、ムカデがいっぱいいました。スセリ姫はムクの木の実と赤土を持って来て、夫に渡しました。そこでオオナムヂの神はムクの木の実を食い破って、赤土を含んで吐き出したので、スサノオの命はムカデを食い破って吐き出していると思って、可愛いやつだと思って寝てしまいました。

すると大穴牟遅の神はスサノオの命の長い髪を取って、天井の横木に結びつけて、大きな岩で部屋の戸を塞いで、スセリ姫を背負い、スサノオの命の生太刀(いくたち)と生弓矢(いくゆみや)と、天(あめ)の詔琴(のりごと)を取って逃げ出しました。

その時、その天の詔琴が木に触れて、大地が揺れて鳴り響きました。寝ていたスサノオの命が驚いて目を覚まして、起きあがろうとして、結び付けられた髪で部屋を引き倒してしまいました。髪をほどいている間に、二人は遠くに逃げました。

 スサノオの命が黄泉比良坂(よもつひらさか)まで追って行くと、はるか向こうに逃げる二人を見て、大穴牟遅の神に言いました。
「そなたが持っている生太刀・生弓矢でそなたの異母兄弟たちを、坂の下に追い伏せ、川の瀬に追い払って、おぬし、大国主の神と名乗って、またウツシ国玉の神となって、私の娘のスセリ姫を正妻にして、ウカの山の麓で、大地深く宮殿の柱を立てて、高天原に届くほどの高い柱を立てて、住め。こやつめ。」

 こうして、大国主の神はその太刀と弓矢で、自分の命を狙う八十神を追い払い、坂の下ごとに追い伏せて、川の瀬ごとに追い払って、国造りをしました。

その後、八上(やがみ)姫は以前の約束通りに、大穴牟遅の神と寝所を共にしました。大穴牟遅の神は八上姫を連れて帰ったのですが、八上姫は正妻のスセリ姫を恐れて、生まれた子供を木の股に挟んで残して、実家に帰ってしまいました。 そこで、この子の名前を木の股の神と言い、また御井(みい)の神とも言います。
                              (つづく)


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