大国主神(7)天照大御神と高木の神

                                   【古事記】   

大国主神(7)

天照大御神と高木の神(=高御産巣日神)


天照大御神は、
豊葦原(とよあしはら)の千秋(ちあき)の長五百秋(なが・いおあき)の水穂(みずほ)の国は私の御子の正勝吾勝勝速日天忍穂耳命(まさかつあかつかつはやひあめのおしほみみ)が治める国である。」と命じて言い、天忍穂耳命が天降り(あまくだり)しました。

天忍穂耳命は天の浮橋に立ったのですが、
「豊葦原の千秋の長五百秋の水穂の国はひどく騒いでいるなあ。」
と言って、戻って来て天照大神にその事を申し上げました。

そこで、高御産巣日神と天照大神は命じて、天の安の河原に八百万の神を集めて、思金(おもいかね)の神に考えさせて、言いました。
「この葦原の中つ国は私の御子が治める国で、私が委ねて与えた国である。しかし、この国には、すばしこい荒ぶる国つ神どもが大勢いると思われる。そこで、どの神かを遣わして、帰順させてほしい。」と。

思金神や八百万の神が協議して言いました。
天の菩比(あめのほひ)の神を遣わすのがよろしいでしょう。」と。
そこで天の菩比の神を遣わすと、そのまま大国主の神に媚(こ)びて従って、三年たっても戻って来ませんでした。

そこで高御産巣日神と天照大御神は、また多くの神々に尋ねました。
「葦原の中つ国に遣わした天の菩比の神はずっと帰って来ない。今度はどの神を遣わせばよいだろうか。」
そこで思金神が
天津国玉の神の子、天の若日子(わかひこ)を遣わすのがよいでしょう。」
と申し上げました。そこで天のマカコ弓、天のハハ矢を天の若日子に授けて遣わしました。

天の若日子はその国に天降りすると、すぐに大国主の神の娘の下照比賣(したてるひめ)を娶(めと)り、またその国を自分のものにしようと思うようになって、八年たっても戻って来ませんでした。

そこで天照大御神と高御産巣日神が他の神々に尋ねました。
「天の若日子はずいぶん経つのに戻って来ない。また、誰か他の神を遣わして、天の若日子が久しく留まる訳をたずねよう。」

そこで、諸神と思金神が
「雉(きじ)で、名前が鳴女(なきめ)という者を遣わしましょう。」
とお答え申し上げたので、鳴女に言いました。
「おまえが行って、天の若日子にこう尋ねよ。『そなたを葦原の中つ国に使わしたのは、その国の荒ぶる神どもを説得して帰順させよと言う事だった。どうして、八年も経つのにまだ帰って来ないのか。』と。」

そこで鳴女は天降りして、天の若日子の家の門にある湯津楓(ゆつかつら)の木に止まり、天つ神の言われた通りに言いました。

すると、天の佐具賣(さぐめ)がこの鳥の言う事を聞いて、天の若日子に言いました。
「この鳥は鳴き声がとても不吉です。射殺すべし。」
と進言すると、すぐに天の若日子は天つ神が授けた天のハジ弓、天のカク矢を持って来て、その雉を射殺しました。すると、その矢は雉の胸を射通し、突き抜けて、さかさまに高天原に射上げられて、天の安河の河原にいる天照大御神と高木神の元に戻って来ました。この高木神は高御産巣日神の別の名です。

高木神がその矢を取って見ると、血がその矢の羽についていました。そこで、高木神は
「この矢は天の若日子に授けた矢だ。」
と言って、諸神に見せて言いました。
「もし、天の若日子が我々の命令に忠実で、悪い神を射た矢が戻って来たのなら、天の若日子には当たるな。もし、反逆の心が有るなら、天の若日子に当たって禍(わざわい)せよ。」

と言って、その矢を取って、その矢が開けた中つ国との境の穴から、突き返すと、天の若日子が朝、寝床に寝ている時、その胸に当たって死んでしましました。(これが還り矢の語源です。)
またその雉も戻って来ませんでした。コトワザに「雉の頓使(ひたつかい)」(雉の行ったきり)という謂われはここから来ています。
                                        (つづく)


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