大国主神(9)建御雷の神

                                   【古事記】   

大国主神(9)

建御雷の神


天照大御神は言いました。
「またどの神を遣わしたらよいだろうか。」と。
そこで思金の神(おもいかねのかみ)と諸神が言いました。
「天の安の川の川上の天の岩屋にいるイツノ尾羽張(オハバリ)の神を遣わすのがよろしいでしょう。もし、この神でないなら、その神の子の建御雷(たけみかづち)の男の神を遣わすのがよろしいでしょう。

その天の尾羽張の神は天の安の川の水を堰き止めて水を貯え、道をふさいでいるので、誰もは遣いには行けますまい。特別に天のカクの神を遣わして尋ねるとよいでしょう。」

こうして天のカクの神を遣わして、天の尾羽張の神に尋ねさせると、
「畏れ多い。お仕えしましょう。しかし、今の話は我が子建御雷の神を遣わしましょう。」と言って、すぐに子を奉りました。その時、天の鳥舟の神を添えて遣わしました。

こうして、建御雷の神天の鳥舟の神は出雲の国の伊那佐の小浜に天降りして、十掬剣(とつかつるぎ)を抜いて、さかさまに波頭に刺し立て、その剣の前に胡坐を組んで座り、大国主の神に尋ねて言いました。

天照大御神と高木の神の命令で、尋ねるために私を遣わされた。
『そなたが治める葦原の中つ国は我が御子が治める国ぞ。』との仰せである。そこで、なんじの心はいかがであるか。」
大国主の神は
「私めは申し上げますまい。我が子の八重事代主(やえことしろぬし)の神が答えるでしょう。しかし、我が子は鳥の遊びをして、魚を取っているので、御大(みほ)の前(さき)に行って、まだ帰って来ません。」と答えました。

そこで建御雷の神は、天の鳥船の神を遣わして、八重事代主の神を引き立てて来て、お尋ねになった所、
八重事代主の神は、父神に語って言いました。
「畏れ多い。この国は天つ神の御子に献上しましょう。」
と言って、そのまま船を踏みつけて傾かせて、青い芝で作った垣根(神域)を作り、天の逆手(呪術的な拍手?)を打って、身を隠しました。 

こうして建御雷の神は再び大国主の神に尋ねました。
「今、そなたの子、事代主の神は天つ御子に献上すると申した。他にまだ意見を申す立場の子はおられるか。」
「また我が子、建御名方(たけみなかた)の神がいます。これ以外にはいません。」
と答えました。

こう話していると、その建御名方の神が千引(ちびき)の大岩を指先で捧げ持って来て、
「誰だ。我が国に来てこそこそと話しているのは。何か言いたいなら力比べをしよう。私が先にあなたの手を掴もう。」と言いました。

そうしてその手を取ると、相手の手は、たちまちに突き立つ氷のようになり、また剣の刃になりました。建御名方の神は畏れて引き下がりました。次に建御雷の神が自分の番だと言って掴むと、若葦を掴むように掴みつぶして投げ飛ばしたので、建御名方の神はそのまま逃げ去りました。

それを建御雷の神は追いかけて、科野(しなの)の国の州羽(すは)の海に追い詰めて殺そうとした時、建御名方の神は言いました。
「どうか、私を殺さないで下さい。私はここに留まってどこにも行きません。また我が父、大国主の神の命令に従います。八重事代主の神の言葉通りです。この葦原の中つ国は天つ神の御子の命令通りにしますから。」と。   (つづく)



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