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景行天皇(3)神夏磯姫・鼻垂・耳垂・麻剝・土折猪折

                                    【日本書紀】

景行天皇(3)
神夏磯姫・鼻垂・耳垂・麻剝・土折猪折

この月に天皇は美濃の国の造(みやつこ)で名前は神骨(かむほね)の娘たち、姉の兄遠子(えとほこ)と妹の弟遠子(おととほこ)が二人とも美人だと聞いて、大碓の命にその姉妹の顔を見て来るように言いました。大碓の命は姉妹を見て密通してしまい、父の天皇には黙ったままにしました。天皇は大碓の命を恨みました。

冬11月1日に天皇は美濃の国から帰還しました。纒向(まきむく)にさらに都を作りました。これを日代(ひしろ)の宮と言います。

12年秋7月に熊襲が叛いて朝貢しませんでした。
8月15日に天皇は筑紫に向かいました。
9月5日に周芳(すは)のサバに着きました。その時、天皇は南の方を見て、群臣たちに
「南の方に煙が沢山立っている。きっと賊がいるに違いない。」
と言いました。

そこに留まって、まずは多臣(おほのおみ)の祖の武諸木(たけもろき)と国前(くにさき)の臣の祖のウナテと物部の君の祖の夏花(なつはな)を遣わして、その状況を調べさせました。

そこには女人がいて、神夏磯姫(かむなつそひめ)と言い、人民も大勢いました。姫は一国の首長という存在でした。

神夏磯姫は天皇の使者が来る事を知って、すぐに磯津(しつ)の山の榊を抜き取って、上の枝には八束の剣を掛け、中の枝には八咫鏡を掛け、下の枝には八坂瓊(に)を掛けて、白旗を船の舳先に立てて、迎えて言いました。

「どうぞ兵を差し向けないで下さい。我らは叛くようなものではありません。今こうして帰順いたします。ただ服従しない者たちが他にいます。

一人は鼻垂(はなたり)と言い、勝手に自分は王だと言って山の谷に集まって、ウサの川上にたむろしています。
二人目は耳垂(みみたり)と言って、しばしば略奪してむさぼり食ったり、人々を殺したりしています。御木(みけ)の川上に住んでいます。

三人目は麻剝(あさはぎ)と言い、ひそかに仲間を集めて高羽(たかは)の川上に住んでいます。
四人目は土折猪折(つちおりいおり)と言って、緑野の川上に隠れ住んで、山川が険しいのを当てにして、人民をさらっています。

この四人は要害の地に住んでいて、それぞれに住民がいて、一国の首長だと言っています。それらは皆『皇命には従わない』と言っています。どうぞすぐに攻撃して下さい。時期を逃さないで下さい。」
と言いました。

そこで、武諸木たちはまず麻剝の仲間を誘いこむ事にしました。赤い上着や袴や珍しいものをいろいろと与えて、かねてから服従しない他の三人を連れて来るように言いました。すると、仲間を連れて集まって来ました。武諸木たちは彼らを残らず捕えて殺しました。

天皇はついに筑紫に入り、豊前の国の長峡(ながお)県(あがた)に着いて、行宮を建てて住みました。そこを京(みやこ)と呼ぶようになりました。
                      (つづく)


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